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『アベコベのリスク』~安倍政権の大罪~③

東京オリンピック誘致のための大世論操作
―2013年夏の日の世界公約の大嘘―

◆思い起こせば2013年9月8日

IOC総会(ブエノスアイレス)において、「東京は安全です」と言う安倍総理大臣の世界宣言。オリンピック誘致のメッセージというか、大見栄か、それとも真っ赤な…。
この「東京…」の表現に違和感を覚えた人は、私だけではないだろう。福島の被災者の人々の顔を思い出しながらあきれ果てた。福島原発の被災者からメールが届いた。「これでいいのか…何という言い方なんだ!」。「怒りを通り越した」と言う声も聞こえた。「」というのは、「区別」の副助詞である。福島はそうではないのかと多くの批判の声があがった。
しかし安倍首相は福島原発は「アンダーコントロール・制御されている」「東京は安全です」、そして「港湾内の0.3平方キロの範囲内で完全ブロック」と続けた。

◆「東京だけよければいいんですか」と寂しそうに話す福島県の被災者

東京は良くても、被災地、福島の原発は、日々厳しい状況になってきている。

双葉町、大熊町、富岡町は、かなりの地区が帰宅困難となっている。チェルノブイリのことを考えれば、20年か30年、いや40年戻ることが不可能かもしれない。

2012年の冬、テレビの生番組に出た。大熊町の若者たちが中継で入っていた。「いつ帰れるんですか?」と中継先から番組に出演している国会議員に質問が飛んだ。誰も答えようとしない。司会者が私に振ってきた。思わず、「民主党政権と一緒で、この番組もユルいですね」と口走った。司会者の顔色が一変した。まずいと思ったが、「帰れないんではないんですか…」と畳みかけた。東北の被災地から戻ってきて、ついうっかり本音を語った(確信的?)。東北の被災地の現場、福島の現場を見て、簡単にいまの福島に歩いて帰れるものではないことを、肌で感じとっていたからである。

その時から、私たちの友人や、私も、原発の再稼働について疑問を持ち始めていた。事態が深刻化する中で敢えて避けようとしているのがいまのメディアかもしれない。フクイチ(福島第一原発)についての理解は十分でないことが日々感じとられる。
「放棄」という言葉は好きでは無い。しかし福島の被災者の人からこの言葉が聞かれるようになった。いらだちの声として、そして帰る家がないという状況の中で、明日が見えないと言う人もいる。「何がおもてなしなんだ。それより福島の人々の思いやりの方が先だろう」という声もあった。

◆「お・も・て・な・し」より「お・も・い・や・り」

おもてなしと言う言葉は、心の底から相手を歓迎し、接待する心というふうに辞書には書かれている、いろいろな意味ももちろんある。
日本国民全体が世界の人々を東京へおもてなしをするという文脈で、オリンピック誘致のプレゼンテーションで行われた。そして、おもてなしと言う言葉が流行語にもなりかかった。「日本は…」と言わず「東京は…」と質問に対して答えた安倍総理大臣。安倍総理は、幼稚園から大学まで一貫して私立の成蹊学園に通った。本当のボンボンである。もちろん親子3代の政治家でもある。他人のことを思いやる気持ち、他者への気配りは教えられたのか。思いやりの気持ちが少しでもあれば、福島に言及し、「全力で福島原発の収束に現在当たっている」と一言でもあれば、まだ救いもあった。しかし現実はこのIOC総会が終わった直後から、福島原発の状況は厳しいという報道が広がり、そして、汚染水があちこちから漏れ始めるという事実が判明した。

◆「港湾内」という言葉の意味も分かっていないのか⁉

安倍総理大臣のIOCプレゼンは念に念を入れて、霞ヶ関の官僚、特に外務省と経産省で作り上げたという。官房長官主導と言うよりも安倍総理大臣自身が中心となってプレゼンを考えたという話もある。
「港湾内」いう言葉。もしフクイチの写真を見れば0.3㎢の港湾内は、コンクリートの防潮堤で仕切られているところしかない。それが「アンダーコントロール」とはなかなか言い難いものである。東電の発表とはかなりの食い違いがある。

9月19日、福島原発を訪ねた安倍総理大臣は、「港湾内の0.3ヘクタールとはどの辺ですか?」と現場の東電関係者に聞いたという。福島原発での港湾内というのは、あの防潮堤の内部しか考えられないというのは福島原発を見ていれば誰でもわかることである。港湾内というのは、港の湾の中であるという意味である。太平洋に張り出した一緒の防波堤の中である。こう考えていけばこういった質問が出るということはあり得ない。あくまでもオリンピック誘致のための作文の朗読係をやったのが安倍総理大臣である。
「港湾内」それ自体の目体的な意味も分からず、世界公約をしてしまった安倍首相の責任はあまりにも大きすぎるし、危険である。将来に禍根を残すことになる。そうしてこのような質問が、安倍総理の何を表わしていたのか、そう考えると、ぞっとするような気持ちにもなった。

どうしてこのような質問になるかということについて、メディアはあまり指摘をしない。ジャーナリズムとは何なのか。もう一度お墓に行って筑紫哲也さんに会って、聞いてみたい。
10月の河北新報である。
「沖合からセシウム首相発言の信用性失う」という見出しで次の記事が載っていた。

「東京電力は10日、福島第1原発の約1キロ沖の海水から放射性セシウム137が1リットル当たり、1.4ベクレル検出されたと発表した。沖合からのセシウム検出は初めて。
外洋汚染を裏付ける結果で、汚染水の海への広がりを『港湾内0.3平方キロの範囲内で完全にブロックされている』と述べた安倍晋三首相の発言の信用性が失わた格好だ。」(10月11日)

港湾出口から約500m沖で採取されたものである。首相の世界公約は、足元から揺らいできた。

◆福島県民の震災関連死は1459名に上る

福島県浪江町町議会はこの首相の発言に抗議した。「福島は多大の犠牲を受けている。このような発言は本当に福島県民の気持ちを考えていない…」と言う浪江町の議会の反論が出た。「港湾内は完全にブロックされている」という指摘に対し、290人を超える犠牲があったとも抗議をした。福島県全体では1459人以上が亡くなっている(2013年12現在)。今後も残念ながらその数はさらに増えることが予想される。仮設住宅での死はいまでも続いている。

◆東京電力上田フェロー(技術畑のトップ)の発言…
「制御ができていない」という重大表現

2013年9月11日民主党の会合で、フクイチの汚染水問題についてのヒアリングが行われた。東京電力上田フェローは安倍首相の安全宣言に対して「いまの状況はコントロールできているとは言い難い」と語った。

しかし、首相官邸は即座に反応し、東京電力を押さえ込んだのか、この発言は夕方に東電サイドから訂正された。東電も安倍首相の言うようにの「コントロールされている」という発言に同調したのである。

首相(政府)と東電の力関係を考えれば、そして日本のオリンピック誘致の高まりを考えれば、原発はコントロールされている状況でなければならない。政府や経済界の基本ラインは、原発再稼働である。

とにかく頭を切り替えて日本全体が、どうしなければならないかということを、いま私たちは考えなければならない時である。

◆上田フェローや福島県民の人たちは事態を目の前に見ている。

原発に関わる全ての人たち、特に日本の政府関係者は最悪の事態を想定することが大切であり、必要である。仮に後で「大騒ぎして大袈裟だ」と言われても、それは笑い話で済む。事態を正しく分析できなければ、最悪の事態が生じることにもなる。まずは汚染水の対策をどうするのか、そして原子炉本体のコントロールができるかどうか、さらに4号機の燃料棒をどう処理するのか。それは人間の命の問題であると同時に、日本という国の生死の分かれ目でもある。

◆汚染水120リットルの漏れが、翌日にはすぐに300トンになった!
―東京電力の発表の本当は、たった1%ですと言う話もある―

とにかく3・11以降の東京電力の責任は重い。福島原発の非常事態の発生で、原発エネルギーへの依存度は、日本全体で20%前後であったが、少なくともこの2年半は数%以下になった。そして、本書執筆中の2013年10月の段階で、原発は稼働していない。もともと、日本の電力会社は電気を作るということに誇りを持っていたのではなかったか。原発導入後、度重なる事故で長い間に隠蔽やごまかしを身につけたのではないか。それが習い性になってしまったのかと、何か寂しさを感じる。

それにしても「120リットルから300トン」というのは明らかに間違いようのない桁違いの誤りである。こういうようなごまかしを表現する言葉は日本語には無い。それもオリンピック招致決定後の、後出しジャンケンである。なんともいえない話だ。

データの開示がいまの東京電力に求められている。しかし、それも各数値データの「メーター」などの写真を証拠として、添付してみせることがいちばん大事である。第二として、関係者および現場作業員の健康状態、体調の悪い人がどの程度いるのか、はっきりとしたデータを示すべきである。私たちのところに現場の作業員関係者からかなり厳しい健康状態の情報が届いているし、新聞報道にも見られる。もちろん風評の問題もあり、伝聞もあるが、少なくとも現場で数件、私は直接そのことを耳にし、目撃もしている。

時系列に考えてみよう。表に示されるように8月19日、汚染水は120リットル漏れたと公表された。翌8月20日は300トンになった。流出の恐れは無いとも言われた。21日には流出について「否定しえない」と東電が発表した。コロコロコロコロと発表が変わり、最悪の事態への道を進んでいる。2013年の4月にも汚染水漏れの疑いがあった。6月にも2号機のタービン建屋の井戸水から高濃度の汚染水が発見されたという。言葉も無い。自民党であれ、民主党政権時代であれ、政府の責任は大である。だが、当事者の東電のいい加減さ、そして隠蔽工作は、東電を追い込み滅ぼすだけではなく、日本を崩壊させることにもなる。そのことを1番知っているのは東電自身だろう。原発のメルトダウン、もしかしたらメルトスルーは、重大な問題であり、日本の死活問題でもある。

◆「数多くの勇気ある専門家にどんどんと現場に入ってもらうのがいい」と専門家は語る。私もそう思う。

さらに現場で作業する作業員の数が少なくなっていることも問題だ。「それだったら俺たちシルバーがやってもいいじゃないか」と65歳以上の仲間たちは言う。「義勇愛国原発収束補助隊でも作って」と、別の友人は私に語る。「もう60を過ぎていれば子どもはいらないし、少しでも子どもや孫のために役立ちたい」と、また別の友達が言う。「もうちょっと孫たちと遊びたい。けども、でも彼らの将来、子どもたちの未来を考えたら、汚染がれき処理の現場に、自分たちが行くこともやぶさかではない」とシルバー仲間は言う。高い放射線数値で人が、作業員が集まらないのだ。それもひとつの手かもしれない。とにかく原発による電気の、光の恩恵を受けてきた私たち世代でもある。恩返しも大切なことだ。

◆IAEA総会がオーストリアのウィーンで行われた。(2013年9月15日)
―山本一太科学技術担当大臣は「港湾内は現状では安全である」と報告―

本当に大丈夫なんだろうか。安倍首相に続いて山本大臣も、世界に福島の安全宣言を行った。これを聞いて愕然とした。東電の発表やそれ以外のデータとは明らかに違う。ホットスポットがある事は間違いがない。関係者の中にも汚染の状況が厳しいと疑っている人たちは多い。「大西洋は世界につながっている。海流の流れも速い…」そのことは北半球の水が汚染され続けているということにもなる。10年後さらに20年後に「とんでもないことになるかもしれない」と現場の作業員が私に耳打ちをする。思わず戦慄を覚えた。「とにかく汚染水はダダ漏れしていて、いまも止まっていない。」とさらに続けて言う。
海外からの批判の声も出てきた。「具体的なデータを示せ」と今回の汚染水漏れは、レベルスリーの事故評価となった。それは大きな危険な状況であることを意味する。

今回の汚染水漏れ事故は、世界各国で3月11日から数日間の全電源喪失・水素爆発以降、福島原発がもっとも大きく取り上げられたものだ。その理由は、事故発生から二年半を経るなかで、放射性物質の発電所敷地内での囲い込みに、依然として成功していていない失態への驚きだ。英国のBBC放送も「最悪の事態が生じているのではないか!」と厳しい批判。ドイツの新聞は(嘘)批判をする。8月末の120リットルから300トンの桁違いのデータの発表はなんとも言えない。2013年8月末の汚染水漏れ、続く9月7日から8日にかけたオリンピックのプレゼンテーション。そして、東京オリンピックの誘致の正式決定。さらに9月19日、安倍総理大臣が自らフクイチを訪れた。この時系列的な分析を見れば、政府が何を考えているのか一目瞭然だろう。最悪の事態を想定することが、いま日本にとって最優先することを何度も繰り返して言いたい。

◆安倍首相のささやかな良心なのか。それともフクイチが心配になったのか!
―2013年9月19日フクイチの視察―

安倍首相の「0.3ヘクタールはどの辺ですか」という問いが、東電関係者にあった。そのことを、東電の関係者がマスコミにリークした。安倍総理大臣のフクイチ視察は単なるアリバイ証明なのか、それとも良心の呵責の表れなのか。いずれ、その言葉の意味が明らかになるだろう。「ブレる安倍首相」と言う表現も出てきた。歴史認識や憲法改正といった問題にかなりのブレが生じてきたからだ。アメリカや中国からの反発も広がってきたことにもよる。福島原発についてはどうブレるのか。「東京…」なんて話は絶対に通じない。何としても、「東京=福島も安全」が至上命題だ。しかし、福島原発訪問の日の夜、安倍総理大臣が有力若手経営者と銀座でステーキを食べている。首相の一日の動向の記事になっていた。本気で考えているのか。

◆青山道夫気象研究所主任研究員の証言(IAEA科学フォーラム)
―福島とウィーン遠く離れて―

山本一太大臣の発言の4日後9月18日、同じウィーンで開かれたIAEA化学フォーラムで、気象庁気象研究所の青山道夫主任研究官が報告を行った。
それによると原発北側の放水口からセシウム130とストロンチウム90が、毎日計約600億ベクレル、原発の港湾外に流れ出ているというのだ。濃度については、1リットル当たりのベクレル量は基準値以下の低いもので人体に影響がないとの見解も示されはした。流出経路は、一~四号機に貯まった汚染水が港湾内に流れ出したあと、炉心溶融を免れた五・六号機の原子炉を冷却するための港湾内の取水口から取り込まれ、それを放水する港湾の外で北側につくられている放水口から太平洋に放水されているというものだ(五・六号機は地震当日には稼働していなかったが、核燃料は原子炉と各燃料プールにあり冷却を続ける必要がある)。港湾の汚染水は、この経路を経てブロックされずに、人為的に迂回して日常的に流れ出す仕組みになっているわけだ。これでは明らかに安倍首相がいう原発港湾内0.3平方キロの外側の海が汚染されているものではないか。青山氏は、本来、気象庁の本来の業務でない放射能測定を、気象研究所で地道にやってきた人物といわれる。そのことを理解していけば、彼の発言はかなり重いものもある。

また、青山道夫氏については、2011年4月にネイチャー誌に論文が掲載されかかったが、圧力で中止せざるを得なくなったという記事もある。
「国民が不安がり、マスコミに扇動されては困るということで論文発表の自由を奪われたということがあった。」と記事にはある、なんとも寂しい出来事でもあるが彼の発言を私たちはもっと重く受け止めなければならない。

◆「汚染水を完全にコントロールするということはできない」とグレゴリー・ヤツコ米国原子力規制委員会前委員長の言葉

福島原発事故当時現職にあったグレゴリー・ヤツコ米原子力規制委員会前委員長が、来日し2013年9月23日などに講演や記者会見を行った。記者会見のなかで、「(汚染水を含む)地下水の影響を最小限にするのは可能だが、すべてコントロールするのは無理だ。どんなことをしても流れ出てしまう。」と分析。また、「福島第一原発の汚染水の問題は以前から予想されていたにもかかわらず、ここまで放置されていたことに驚いた」と、東京電力と国の対応に疑問を示した。汚染水への対応について、事故を起こした東京電力が主体となってやるのは当然であるが、政府がしっかり監督すべきだとする考えを示した。ヤツコ前委員長は、事故当時、何人もの研究者を福島に送って事故現場の調査もしている。それゆえ彼の発言には重みがある。
さらに「原発安全」と言う表現の批判をして、「原子力業界は『全ての原子力発電所は安全だ、事故は起こらない』と言い、事故が起こると改善をしようとする」。「事故が起こると大騒ぎになるが、事故は起こるものだという理解を持って始めなくてはならない。将来のある時点で事故は起こるものだ。」と、原子力発電とどのように向き合えばよいのか、示唆したことは大切な部分である。重い発言でもある。現在の原子力発電の置かれた重大さの問題だ。
日本の政治は、自民党も民主党も、3.11当時から汚染水問題の真実を正確に伝えると国民が動揺するということで表現を控えてきたし、事実をねじ曲げるような報告をしてきた。「そんなことを言っているような場合ではない」と言う声は現場から聞こえてくる。

※次章更新までしばらくお待ちください。
※当文章の一部あるいは全部をそのままあるいは改変して転用または掲載することを一切禁じます。

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