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『アベコベのリスク』~安倍政権の大罪~②

「安倍さんアベコベですよ!」と言っても聞く耳なし
―極めて重大なアベコベの四大リスク―

◆四つのアベコベが分かっていない。そして政権維持に奔走する悲しさ!

「アベコベですよね?」とゼミ生。ゼミの政治学の時間に、オリンピック誘致と福島ボランティアの発表をゼミ生が行った。別の二つのテーマだったが、東京での盛り上がりと福島被災者の落胆がはっきりと示された。

もちろん安倍首相の頭の中にある福島原発は、「東京安全」であり、〈完全ブロック〉された〈アンダーコントロール〉である。

しかし、福島の現状はさらに厳しい。汚染水漏れはつづき、現状は手探りで先が見えないにもかかわらず、「なんで刈羽(新潟)再稼働を急ぐんだ…」という現場作業員の声もある。

第一のアベコベ 〈オリンピックより福島原発収束〉

東京オリンピック誘致より、刈羽原発再稼働より、原発海外セールより、まず、福島第一原発の収束最優先である。
オールジャパンで、全力で、フクイチの収束に努める。それは、いまの日本の生命線である。

第二のアベコベ 〈中国封じ込めより日中首脳会談〉

安倍首相の外交戦略(?)とされる外国訪問は、歴史的快挙(?)と呼ばれるくらいに世界中へ広がる。これを「中国を取り囲む、全ての国への訪問となる」と脳天気なスタッフやメディアは評価する。〈中国封じ込め〉戦略などと訳知り顔でコメントする人もいる。何か違う。アベコベである。まず、今の日本にとって、日米、日韓、そして日中だろう。中国を避けるべきではない。

オバマは、アフリカ出身だ。差別は嫌いである。マルチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師のI have a dream(人種や肌の色で差別をされないという夢)をオバマは継承している。いまの日本は中国との首脳会談が大事だ。日米同盟であり、日中会談である。なぜオバマが安倍を避けているのか、はっきりしている。そして、中国が、韓国が、安倍との会談を〈拒否〉していることもはっきりしている。原因は尖閣の問題だけではない。

第三のアベコベ 〈アベノミクスは悪いインフレ〉

アベノミクスの三本の矢が、的外れである。物価は上がり、消費税も5%から8%へと、比率にして60%。消費税率の3%アップは、消費者のみならず、流通業、小売店業者にとっては、かなりのダメージとなる。給料が来年5%上がる会社は限られている。100社もあるだろうか。エコノミストは「20~30社程度」と悲観的である。

黒田日銀総裁が進める異次元の緩和で、ハゲタカのエジキになった日本経済。株価は14000円台にはなり、企業の含み益は高いが、乱高下が続く。失業率は下がったが、非正規労働者は、あと1年もせず、2000万人を超えると聞く。何をかいわんやの〈格差社会ニッポン〉の到来か。利益の活ししかしなくなった。皆で頑張ってきたのが日本の美徳だ。人へのおもいやり、優しさが、日本人の良さだった。

第四のアベコベ 〈増税より行革・公務員人件費カット〉

「入るを図って出ずるを制す」という言葉が、財政学のイロハである。政府は、国民のみなさんに税金という負担をかける前に〈出ずるを制す〉ことを先にやらなければならない。国税44兆円、地方税35兆円、合計79兆円の血税の内、国と地方と外郭団体の公務員人件費は30兆円に及ぶ。税金による公務員の共済年金負担分を加えれば、さらに2~3兆円アップする。国からの助成金は、大学、JA、その他の公益団体に業務費、事務費などに使われている。かなりの無駄がある。これも2~3割のカットが可能という。それだけで、2~3兆円は浮いてくる。合計で35~36兆円になる。

国民は、公務員340万人、外郭団体や公益団体などのパブリックセクター300万人の給料を払うために納税しているのではない。全ての税金79兆円の40%近くが、公務員人件費では納得いかない。それも、公務員人件費の、42~43歳の平均は650万~720万円と言われる。民間労働者の平均はこの10年下がり続け、400万~410万円という話である。

とんでもないアベコベだ。まず公務員人件費や事務費のカット、天下りの廃止である。


◆東京オリンピック招致決定―2013年9月8日―

2013年9月7日から8日にかけてのアルゼンチンの首都ブエノスアイレスでのIOC総会は、波乱含みだった。東京有利の声はあった。確かにマドリードはなんといっても財政難である。トルコのイスタンブールは、シリアの問題が大きく、また国民からも反対デモがあった。東京はもちろん、福島原発問題があった。麻生副総理財務大臣のナチス発言もあった。しかし、安倍首相は、精力的にアジア・中東諸国、そしてヨーロッパを訪問していた。かなりの根回しをしていたのか、そして多くの時間を外遊に割いていた。お土産もいっぱいあったのだろうか。ODAや円借款もある。

東京はプレゼンテーションで見事なチームワークを見せた。オールジャパンの戦いであった。第一回投票で42票を取り、決選投票でイスタンブールを圧倒して、東京オリンピック開催が決定した。日本中が喜びに沸いた。バーゲンセールも行われた。気が早すぎる…。7年も先である。
ところが、福島原発の汚染水問題の深刻さは、その直後から日本でも大きな報道となった。東京オリンピックより福島原発収束が圧倒的な優先順位ではないのか。しかし日本のメディアは沈黙し、東京オリンピックへエールを送り続けた。2013年の夏のことである。詳細は次章にまとめるが、多くの人が違和感を覚えた。「順位が違う」ということに。
 

◆刈羽(新潟県)原発の再稼働を急ぐ日本政府と安倍首相

東京オリンピック招致が決まってから、安倍首相は刈羽原発再稼働へと東京電力を刈り立てているとしか思えない。刈羽原発について、原子力規制委員会も数多くの疑問を持っている。新潟県知事の泉田裕彦は言を左右にしながら、最終的に原発再稼働へ舵を取った。まだいくつかクリアしなければならないポイントは残っているが、日本政府としては、大飯原発(福井県)が停止し、54基の日本の原発が全て停まっているいま、刈羽原発を再稼働させたい。

〈しかし、10%の節電で、日本の原発全停止でも、日本のエネルギー供給は機能する。ブラックアウトの可能性は極めて低い。加えて、太陽光パネルを備えた住宅の普及や、自然エネルギーのさらなる拡大が大いに期待されている。〉

原発の一基の発電量が無くても、日本のエネルギー状態は大きな混乱は無い。
石油価格と火力発電用の液化天然ガス輸入量の高止まり、そしてアベノミクスによる円安の影響での輸入物価全体の上昇により、貿易赤字が年間で八兆円(二〇一二年度)となり、ガソリンの値段も高騰している。しかし、原発の補償や除染などの費用が一〇兆から二〇兆と言われる状態で、エネルギー転換は、日本のことだけである。地球全体での一つの大きな流れである。


◆100兆円と言われる原発輸出セールが、アベノミクスの成長戦略?

2013年の1月から9月までの日本からのインフラ輸出は5兆円を超えた。昨年の5倍である。安倍首相は、10月のトルコへの原発セールス以外に、アラブ首長国連邦(UAE)と原子力協定、サウジアラビアとは締結に向けた協議開始での一致、さらにインドとも原子力協定に向け交渉再開と、日本の原発の輸出をハイペースで行っている。将来的には100兆円市場と言われ、アベノミクスの重要な柱とも言われているが、福島原発の状況を考えれば、余りにも無責任ではないのか。

これもまさに、フクイチが完全収束していないいま、そして、核のゴミの問題が地球規模で解決していないいま、不完全な事故処理中の原発を海外へ売るという行為に対して、政治家としての良心の呵責はないのか。欠陥製品を海外へ売りつけることは、商売、貿易の正道から外れていると思うのは、私だけではないだろう。本当に相手の国に喜んでもらえるものなのか、目先の利益なのか、一歩あやまると大きな禍根を残すことになるし、安倍首相一人の責任ではすまない。原発輸出より、何と言っても福島の完全収束であり、福島の被災者の生活の安心を守ることが最優先である。

安倍首相の軽率な行動を見ているとゾッとする。


◆日本の外交もアベコベ。「まずは中国でしょう」と言う声は多い。

友人の外交評論家とテレビ局でばったり会った。彼は一言「日本の外交は明らかに順番が違いますよ」と私に告げて足早に去った。日本の外交はまず日米が基軸であり、日本と韓国の日韓友好であり、そしてアジアの中で生きる日本として尖閣の問題がある。日中関係をどう改善するかが最重要課題である事は誰も否定もできないことである。しかし習近平中国国家主席は安倍晋三との会談を一切拒否している。日本の外交関係者が何人も北京を訪れて安倍総理の訪問を含めて日中首脳会談を求めているが中国サイドは拒否している。G20がロシアで行われた時、習近平と安倍晋三が数分立ち話をしたと新聞報道にある。中国語と日本語の通訳を入れて数分の立ち話では日中首脳会談にはもちろんならない。福田康夫元総理大臣は、まず日本と中国のトップが話し合うことが外交のスタートである、とかなり厳しい批判の言葉を寄せた。
「中身がないですよ安倍外交は」と友人の記者。「中抜きじゃないですか、日本の外交戦略は」と友人の外交評論家。明らかに戦略を間違えているというのか順番が違うと言う声が多い。
しかし、半年ほど前にテレビで、中国を取り囲む国々の訪問が安倍外交の特色であり、これは中国封じ込め作戦だと言う分析があった。
3・11から、2年も経ったいま、どうして日本が技術的に優れているからといって放射能漏れを起こしている原発を売り込めるのか。国内に目を向け直すべきだ。そして、もちろん福島原発収束に東電と政府は、福島に専門家を召集するべきである。と同時に、いまこの時に、原発セールスをするべきではない。正直な商売こそ、商売の原点であり、世界の信頼を失うことになる。

さらに、全くアベコベの安倍首相には、大きなリスクもある。もし、東京オリンピックができないことになったら。〈安倍は世界一の大ウソツキ〉という汚点を残すことになる。その安倍政権を選んだのは、日本国民である。そうならないためにも、その一人として、異議申し立てをしていかなければならない。


◆ヘイトスピーチとパク・クネ韓国大統領

韓国大統領のパク・クネさんは女性である。彼女の目にも耳にも日本のヘイトスピーチデモが報告されている。特に、東京新大久保のヘイトスピーチデモは、彼女にとっては韓国のリーダーである彼女にとって、そして韓国の女性として極めてつらいものであろう。蔑視的なこのヘイトスピーチの内容については、とてもここで文章にまとめられるものでは無い。現場に立ってみて日本人としても恥ずかしい思いがある。もちろんこのデモに反対する若い人たちもいる。一部には左翼の人たちもいるといわれるが、とにかくこのヘイトスピーチデモに対して「そんなことをやめろ」と言う若者のデモもあるということを、私は外国のメディア関係者から聞いた。そして新大久保を歩いた。

安倍首相の韓国訪問はなかなか進まない。日韓同盟、日韓友好が安倍政権になって止まっている。そんな時に2013年5月、安倍内閣の飯島勲内閣参与がピョンヤンを訪問した。大きな立派なボストンバックを持っているがテレビの映像で流れた。何が入っているのかはそれほど想像に難しくはない。こんなことをして何の意味があるのか。私もピョンヤンに2回訪問し、学生たちと一緒にお米と砂糖を届けたことがある。当時私たちを受け入れたのは現在の日朝国交正常化交渉担当大使のソン・イルホである。「日韓は同盟国ですよ」と大学の韓国専門家の教授。「二人三脚が最低限の条件です。」と付け加えられることを忘れなかった。しかし、日韓両国の間にはすきま風がピューピューと吹いている。


◆安倍首相が会ったのは、アメリカ国防総省の課長クラス⁉ 元外交官孫崎享の記事が鋭い

「新聞の首相動静(12日)が目に留まった。安倍首相が、ジェームズ・アワー元米国防総省日本部長と面会していた部分だ。米国の安全保障分野の組織、指令体系は、おおむね次のようになっている。大統領~国防長官~国防次官~国防次官補~国防次官補代理~日本部長の順である。「部長」と訳されているものの、英語では「Senior Country Director」。つまり日本での肩書は『課長』」

ここに、アメリカサイドの、いまの安倍首相への痛烈で皮肉な対応が見えている。それでも安倍首相は、日本版NSCや秘密保護法案制定に血道をあげている。どこまで本気なのか。首相と課長である。首相としてのプライドはあるのか。明らかに格の違いだ。相手にされていないというのが現状だろう。

安倍外交が見忘れている逆立ち現象でもある。


◆「I have a dream」と語り続けたキング牧師

マルチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師は、1963年夏、ワシントンで大行進を指導した。そのときの言葉が「I have a dream」だった。アメリカの黒人公民権運動の先頭に立ったキング牧師が、徹底した事は強い非暴力主義だった。そして1964年、ジョンソン・アメリカ大統領の時代にcivil rights act(公民権法)が制定された。この運動はいかなる人種差別も行わないという世界の人々の友情、協力が原点でもあった。そしてこのことが評価され1964年秋ノーベル平和賞を授与された。史上最年少の年齢であった。
当時、大学生だった私にとってはディープインパクトだった。それから10年近く経って、アメリカに研究旅行に行ったとき、ジョージア州トロントの地元の人たちと話す機会があった。キング牧師の弟さんと出会った。「兄貴の夢はみんなが平等で肌の色や何かで差別されないということだけだった、そんなことを兄貴は夢見ていた、私も何度もそのことをそばで聴きつづけた…」と彼は淡々と語ってくれた。

それから半世紀近く経ち、今度は日本でヘイトスピーチデモが行われている。しかし一方で、「そんな事はやめろ、みんな仲良くしよう」というプラカードを持ってスピーチに反対する若者が新大久保に集まってきた。友人の外国人記者が「まだ、日本は捨てたもんじゃない」と取材内容をメディアで発表してくれた。


◆悪いインフレもアベノミクスの逆立ち現象

二〇一三年九月、国の経済規模を示すGDP(国内総生産)は、四~六月期の三ヶ月間では、〇・九%増加し、この状態が一年間続いたと仮定した場合、年に三・八%増加となると言う報告がなされた。久ぶりに明るい数字である。デフレ脱却と言う大きな文字が新聞の大見出しになった。
しかし、物価も上がり続ける。ガソリンの上昇はかなり高いものになり一リッター一六〇円近くまでなった。食料品もどんどん値上げの連続である。しかし、給料が上がったと言う方々は少ない。ローソンの社長が今年の春「三%のベースアップをする」と宣言した。もちろん政府の重要な役職も彼は担っている。しかし、ローソンも社員の中で、正社員は約三千五百人(一〇一二年度)だ。残り二万人を超える実際の店舗で働く人たちは、パートのおばちゃんと大学生のアルバイトである。彼らの給料は時給八〇〇円前後。もちろん上がらない。


◆企業の内部留保倍増

2011年の企業の内部留保は約280兆円という数字である。1990年は127兆円だったと言う。20年間で倍以上の増額である。資料の示すところによれば、企業がドンドンと内部留保を固めていくのは自由資本主義の世界では当たり前である。もちろん会社が内部留保を勘定するということは大事である。しかし、それ以上に会社員全体の社員の給料が上がっていくことも大事であろう。一方、企業が利益を上げて安定して運営して行くには、正社員を減らすことが最適だという考え方もある。
アメリカは株主資本主義であると言われる。つまり株主の配当利益を出すために給料を減らし、非正規の若者を雇用するというリストラもやってきた。日本は、会社資本主義と言われる社長の給料と同時に社員の給料が増え安定することが大事であるという慣行があった。その弊害として、従業員の配置転換を難しくし、新分野に迅速に投資して、事業を展開することを難しくする弊害が次第に目立つようになった。つまり投資という問題であり新規事業の開発ということでもある。しかし同時にこの二〇年間で飛躍的に増加した。「力のない奴はクビ」こういう風潮が広がっている。物価が先にあがり、給料が追いつかなければこれは悪いインフレと言われる。この兆候がアベノミクスの中で生まれ始めてきた。


◆馬を川へ連れて行っても水は飲まないと言うエコノミストの言葉

異例の規制緩和をしてもお金が世の中に回らない。「馬は水を飲んでくれないんだよ」と友人の銀行関係者。アベノミクスがはやしたてられる中で、冷静なエコノミストは少しずつ気づき始めている。
「塩を舐めさせれば水を飲むかもしれない」と言う人もいる。たしかに喉も乾けば水を飲むかもしれない。しかし、いまのデフレ状況で、じり貧状態の日本の中で何が塩になるのか思い当たらない。ベースアップがないけれど、企業の方も余裕のあるところはけっして多くない。
「塩」と言うのは公共事業のことなのか。公共事業を拡大し、とにかく巨額の財政出動を行い雇用を増やす。儲からなければ給料を増やす事は出来ないが、儲かれば給料を上げるのか。額に汗して働く人たちが本当に報われるなんて言うことは、この20年日本の社会の中ではなかったような気がする。何かが逆立ちをしている、その象徴的ともいえるのが今回のアベノミクスなのかもしれない。


◆ハゲタカの餌食になった日本

「おいしいですよ日本は…」とアメリカ帰りのファンド関係者。愕然とした。何年かぶりに赤坂でパッタリと出会った後輩である。口をききたくはなかったが、「先輩…」と寄ってこられたので体育会系の人間としては弱い。アメリカやハゲタカファンドがいま考えているのは日本の規制緩和、金融緩和そして公共事業拡大ということ。日本株が上がり、その反動がいろいろな分野におよび、株価が乱高下する中で利益を確定するという方法である。これは1990年代からずーっと続いていたことであり、私もNYのウォール街でそのような会話を目撃し、耳にしたこともある。

2013年5月23日、日本の日経平均株価は1日で1143円の暴落となった。急落という言葉の方が正確かもしれない。「一日で2000円も乱高下したんですよ。」「ファンドの餌食になった」と言う報告もあった。ぞっとするファンド関係者の生の声だった。そして「わかりやすいですよー日本の国は。」日銀総裁が異次元と言ったとき、「やられる、と言う感じがあった…」とにやりと後輩は笑う。思わず横を向いた。日経新聞の記事の中に「日本株は上がりすぎ、勝負に備えよとアメリカのヘッジファンドが暴落前に売る手配をしていた」という報道があった。5月23日の1週間ほど前のアメリカのヘッジファンドの関係者の言葉である。もちろん定かではないが同じような話はあちこちから聞こえる。日本も株価は4月の始め12000円だった。しかし、5月も23日直前の20日は、15000数百円となった。そして急落が続き、この本を書いている最中の10月の上旬は再び13000円台の低迷を続けている。アメリカの調査会社によると、世界のヘッジファンド業界の運用資産は2013年3月末時点で約2兆3700億ドル、日本円にして240兆円である。これにレバレッジをかけ2倍10倍という、このような巨額のお金が為替の世界、株式市場に流れ込み、海外の投資家は10兆ドル以上に膨らんだというそのお金がいま売りに転じているという。そして、「再び日本の株は上がる日が来る」という言い方をする人たちもおり、今春は17000円前後まで行くという予測も立っている。


◆デイトレーダー・ミセスワタナベ

銀座に勤めているチーママが「1ヶ月で3000万円儲けた」という話が聞こえてきた。 一ドル80円の時、金融緩和アベノミクスと聞いた途端「これは間違いなく円安になり90円台は軽く行く、レバレッジをかけて何千万、何億かわからないが勝負した。」と言って何本かの指を立てて、1ヶ月で1000万か、2000万か分からないが、1晩で100万~500万を稼いだと豪語していた。いわゆるミセスワタナベである。日本の50、60前後の女性たちがパソコンの前に張り付いて為替、ドル勝負にのめり込む姿が浮かぶ。

一時なりをひそめていたミセスワタナベ現象がまたぞろこの安倍政権のアベノミクスで動き出したと言う。「為替は期待で買い、儲かったらすぐに売りぬける、これが鉄則である。」とは財務省関係者の言葉。投資の世界では常識となっているのが、経済の実態を反映するのが株価であり、日米経済の実態を示すのが、ドルの為替である。しかし、実際は巨額のハゲタカファンドマネーであるとも言われる。

フラッシュオーダーは1000分の1と言われる。スーパーコンピューターで、ドルの上げ下げでポジションを取り、売り買いをする。度胸がいる。金もいるがもちろん為替の変動がなければ利益は生まれない。これもちっちゃいけれどもハゲタカの子供であるかもしれない。


◆ヘッジファンドは、暴落前に売り抜けるという新聞記事チェック

この記事を見て何とも言えない気持ちになった。しかし、これも現実である。5月も中旬、アメリカのファンドも関係者たちが方向を決めたのか、日経平均株価が15500円を過ぎた段階で一斉に売り浴びせた結果が、すでに触れた1143円、5月23日の株の暴落である。「日本はおいしい」と言われて何とも言えない気持ちになる。私は為替や株の専門家ではないが、愛国心は人一倍だ。もちろん倍返しをしたいという気持ちはある。


◆日本人の貯蓄率も減ってきた

駒沢大学で専任講師になったのは30歳の時、1975年の春だった。明治学院大学で非常勤講師をしながら、チャンスが開けた。非常勤講師の給料は2コマで月3万円ぐらいだったと記憶している。もちろん食べてはいけない。現在の東北福祉大学の学長、萩野浩基先生が、当時駒沢大学の専任の座にあった。そして、島根県の名張ご出身で曹洞宗の僧侶である萩野先生は大学院時代の後輩である私に声をかけてくれた。「情けや恩は石に刻んでも、一生背負っていくこと」を教えられた。そして、いまささやかだが東北福祉大学でお手伝いをしている。役に立っているかどうかはわからないが、とにかく特任教授として授業を持ち、学生たちと正面から向き合って、災害・被災地の現場に共に立っている。

駒沢大学で最初に教えたのは政治学と福祉国家論であった。もちろん福祉は専門ではなかったが、大学院時代から福祉関係のボランティア活動をしていたから現場の感覚はあった。学問的には何も分からなかったけれど、スウェーデンや北欧そしてイギリスを中心に福祉国家を書物の中で、外国語文献の中で研究し、「福祉国家と行政国家」というタイトルで30代前半から授業を持った。

そして、その当時、日本人の貯蓄性向をレジュメにして学生に配った。当時1970年代から80年代に、日本人の貯蓄性向は15%以上、20%を超えることもあった。つまり収入の15%から20%を貯金に回すという貯蓄も右肩上がりの成長の時代でもあった。 ところが、1990年代に入り、バブル崩壊を迎え、貯蓄性向は急激に下がっていった。

勤勉・質素の特色を持つ日本人も、バブル崩壊となり貯蓄率は減少。2008年のリーマンショック前後では2%以下にまで沈んだ。そしてリーマンショック以来少し上向き、現在は4~5%である。

しかし、貯金を取り崩ししながらの生活である。さらに年金生活者は苦しい生活を余儀なくされている。「きついきつい」「カスカスだ」と言う彼らの言葉も聞かれる。
もちろん1000万人を超える年収200万円以下のワーキングプアの生活も苦しい。そしてその大半は20代、30代前半の若者たちであり、とても結婚をするというような経済状態では無い。


◆安倍さんは「夜郎自大」と言う感じですね、と先輩の元記者

「最近の安倍さんを見ていると、なんか少し自信過剰という気がするが、夜郎自大という感じですね」といわれた。

確かにそう言われればそんな気もする。「夜郎自大」と言う言葉はもうあまり使われない。四字熟語かもしれない。昔、中国で「夜郎」という小さな国というか部族がいた。漢の大きさも知らないで、自分の存在の小ささもわからず凄く偉そうに振る舞っていた。このことから夜郎自大という言葉が生まれたという。なんとなくいまの安倍総理大臣の動きは、自分の存在がどの程度であるかということも分からずに、いろいろと大胆な発言をして、日本の国を大きく変えようと思っているのか。アベノミクスについてもそうであり、東京オリンピック誘致で「福島原発はアンダーコントロールされている」という言葉の意味をどれだけ理解しているのか。多くの人がそう思っている。中国との関係も福田康夫元総理の言うように、まず日中両国の首脳会談から全てがスタートするということは当然のことである。

小泉純一郎元総理大臣のように、「福島原発再稼働」というよりも、「原発ストップを考えてみたらどうだ」と言う事、これも意味あるサゼッションである。通常ならば自分たちの先輩、あるいは自分を官房長官にし、総理大臣に抜擢をしてくれたその先輩がこのような話をするならば、一度会ってゆっくりと夕食をともにして、いろいろな意見を聞くということが、当然では無いかと思う。
「夜郎自大」という言葉、なんとなく響きの良い言葉ではない。しかしそんな感じを持たれるというところが安倍首相の、もしかしたら力量の低さなのかもしれないと思う。


◆アベノミクスに立ちはだかる五つの障壁

とにかく日本と言う国は「シュリンク(縮まっている)」ということである。

〈第一点、日本はいま、人口減少時代に突入した。〉

三年前の二〇一〇年から人口が減りだし、去年は二七万人弱の人口減である(住民基本台帳人口調査)。このあと三〇万、四〇万人単位で人口が減っていくと予測されている。そして同時に、子供は、二〇一二年には約一〇三万七千人去年産まれたが、二年に連続して減っており、今年は一〇〇万人ギリギリ、二年後の二〇一五年には約九五万人となり、二〇二〇年には約八四万人にまで減っていくとみられている(高齢社会白書平成二四年版)。
いわゆる、少子高齢化社会である。それは他国に類を見ないほどの急速な少子高齢化である。一五歳から六四歳までを、労働者として経済の生産活動に従事する年代として計算しているが、その年代も一九九五年の八,七一六万人を頂点にして、昨年二〇一二年には八千万人台を初めて下回った。一九年間で労働人口が八%分減ってしまった訳である。これは、いかなる経済政策を打とうとも、経済が成長する基礎部分が減っているから、成長しづらい体質になってしまっていることを示すものだ。安倍内閣と日本銀行とが進めている異次元の金融緩和をしても、日本という国が経済成長を伴ってデフレを脱却して、インフレになるということはなかなか簡単では無い。

〈第二点は円高による産業の空洞化である。〉

先日、秋田県に行った時も「これから1年か1年半で、TDKという秋田有数の企業が4つ、5つの下請会社を閉鎖する。」というニュースが地元の新聞や地元のTVニュースのトップを占めていた。いろいろなことを考え合わせれば、100円でも円高だろうと思う。そのことを考えれば日本の中で企業誘致してもなかなか人が集まらないし、同時に1人当たりの賃金が15~16万円まで下がったとしても10人雇えば、月に150万、100人だったら1500万、年間で億を超える金額であればいまのように下請け企業でいろいろやっても、なかなか採算が取れない。その結果、タクシー業界の方に人は流れ、結局夜の街は空車の数が多すぎるということになる。この現状を考えれば、円高による空洞化は、やはりアベノミクスの成功にとっては大きな障壁である。

〈第三点は、疲弊しきった中小企業と地方都市の商店街〉

疲れ切った地方都市の商店街では、異次元の緩和をされてもお金を借りて新しい商売をする、投資をするということはできない。企業設備投資ということもなかなか簡単では無い。いわゆる「馬を川へ連れて行く事は出来ても、水を飲まない」という部分である。資金需要が無いというのは分かり切ったことであり、アベノミクスの第3の矢という成長戦略は簡単には動かないような気がする。

〈第四点は、借金大国日本の借金残高は、2013年夏に1000兆円を超えた。〉

当然、これ以上借金を増やしていく事は大きなリスクとなる。このリスクは補正予算を5兆円組むことや、国債の利払いが20数兆円になってくれば、もうとてもじゃないけども「借金のための借金を」というような自転車操業になる。このことを考えれば、なかなか民間の資金需要というものが広がってこないのが現実である。日本中を歩いていて現状を見れば、なかなかデフレ脱却というようなことができるとは思えない。少なくとも地方の現場を歩いてる私としてはデフレ脱却は絵に描いた餅である。

〈第五点として、おそらくこれがいちばん大きな問題であろうが、それは「節約好きの日本人」ということ〉

とにかく日本人は節約が大好きである。スーパーマーケットや小売店の関係者と話をしていて、「もうギリギリです。安くしないと売れませんから、利益はギリギリ」という話を何度も聞いた。やっぱり日本の消費者は賢い。節約好きであり、倹約が大好きだ。そう考えていたら本当に100円ショップだけではないが、最近のテレビコマーシャルでも、回転寿司92円というのがあった。「えー」と言う金額であり、おそらく消費税が8%になっても消費税込みで100円ということなのかもしれない。さらに、東京都内に住んでいていくつかのスーパーマーケットをみても、50円、60円という通常、自動販売機で100円か120円で売ってる物が50円、60円で売られている。ここまで下げれば利益はなかなか出ないだろう、と思うが、とにかく日本の消費者は賢い。「他のところよりも自分のところが1円でも2円でも高かったら売り上げはがくんと下がる」と関係者は言う。そう考えてくると、本当にこれからの過当競争では、小売店、スーパー、コンビニ店の戦いというものは熾烈さを加える。普通のことをやっていたのでは当然のことながら、売れないし、買ってくれないし、もちろん売れたとしても利益上がらないという発想だけは否定ができないだろう。まさに、負の連鎖の中の日本である。


以上のようにアベノミクスには「いくつかの重大なリスク」というものが隠されている。このことを考えていくと、簡単に日本の経済がインフレになって、そして賃金が上がっていって、なんとなくGDPが500兆円に再び戻って、530兆、550兆という金額に、ましてや600兆になる、ということは、人口減少時代の少子高齢社会では難しいような気がする。

日本全国を歩いていて、本当に地方の疲弊と言うものがはっきりしてきた。この深刻さを考えてくと、なかなか簡単に日本という国は再生はできないだろうと思う。

これらのことを総合して考えてみると、いまやらなければならない事は恐らく、身の丈にあった日本の中でどう生きるのか、ある意味では日本型モンロー主義というものを考えなければならない。同時に国際社会の中での協調を持たなければ、貿易立国の日本でありながら、レアメタルを含めて、簡単に輸入することができなくなる。そうならないために、日本の国内に対する様々な問題の解決と当時に国際社会、特にアジアの中で中国を含めて東南アジアとの関係をどう改善するのか。アジアに出られる企業には出てもらって、少しでも安いものを作って、日本の社会の中に還元する。これらのことも真剣に考えなければならないと思う。

いずれにしろ、アベノミクスはあべこべのリスクという風に言わざるを得ない。この問題を解決しない限り、東京オリンピックの問題も、そしてまた福島原発の収束の問題も簡単には避けて通れないような気がすると思う。

※更新までしばらくお待ちください。
※当文章の一部あるいは全部をそのままあるいは改変して転用または掲載することを一切禁じます。

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